1999-07-10 13:30開演 1000days劇場
よりにもよって前日が健康診断だった。夜中にものすごい腹痛で「腸でバリウムが固まっているのかしらん」という感じ。朝起きてもまだ盲腸のあたり(推測)が痛いし、「今日出ないようだったら明日も飲んでね」といってもらった今日分のクスリを、云われたとおり全部飲みました。水もたくさん飲みました。と、そんなこんなで、ちょっと不安だったわけだ。せっかくワタシ的には前のほうの良い席で観ていたというのに、案の定、途中からおなかが痛くなってきた。
ひさびさに抱腹絶倒(良く言いすぎ?)気味な芝居である。雪組も久しぶりの洋物&現代物だ。ニューヨークのバッティングセンターで、みんながみんな、全然ニューヨーカーに見えなかったのだけが難点だけど、おもしろかった。肩はこらない、笑いあり、笑いありの70分。たまにはこんな作品があってもイイかも。どこからどこまでが本当でウソなのか? 最後にウソが全部明らかにされるけれど、ジェラール(轟悠)「僕の目を見てウソをついてごらん」って云われてサンディーヌ(月影瞳)がついたウソは実は本当かもよ?って解釈もできるし、いろいろと思いを巡らせることもできる。まじめな顔してみんなウソをついているけれど、本当は本当のことを云っているかもしれないし。
作・演出の石田昌也氏は「宝塚の異端児」って云われるだけあって、宝塚の中ではかなりアナーキーな人だ。ショーを見ていてもわかるのだが、彼は舞台にテレビをわざわざ持ち込むんだな。好き嫌いや是非はともかく、そういうところがおもしろいし、「アナーキー」という所以である。で、今回は、スミレコードに引っかかるあんなことやこんなことを具体的に言っているであろうと思われる部分で、調整音を流していた。それとテレビ以外では、携帯電話の着信音。鳴ったとき、一瞬ドキッとした人もいることでしょう。そこは風刺なのだが、そんなところがどっかの理事長に危険人物と目されているのではないかと、思うのだ。だからしばらく植田(紳)さんと一緒に仕事をしたのではないんでしょうかね。矯正の効果は全然ないが。今回の座談会でも「植田ファンにおもしろかったか聞くようにしている」とか云ってたし。
見所はもちろん「ウソ」なので、それは見てのお楽しみである。それなのに『グラフ』と『歌劇』に全部載っちゃったのである。まじめな図書館文芸員サンドリーヌはおもしろい。サンドリーヌそもそもの出発点が、「真面目な人をおちょくる」なのだが、宝塚(っていうか、下級生の頃の月影)もパロディにしている。しかしだんだんと違った一面が出てくるわけでして、本人は『春櫻賦』の小紫が一番近いと「宝塚GRAPH」(1999年8月号)で云っていたが、月影瞳の本質はサンドリーヌだと、私は思う。最後でちょっと(台詞廻しとかが)湿った感じになっちゃったのは脚本のせいでしょうか。それだけはヤである。それと関連して、オープニングが「男のために化粧をするなんて」なので、最後が「ついて行くわ」ぢゃ、それだと小紫なので、やっぱヤである。でも深読みすれば、あれは見かけかも。あの後ついて行っているのはジェラールだったりして……
みんな楽にやっているので、観ているこっちも緊張しないから楽である。しかし、「スターの小部屋」でぐんちゃん・ミリ・まひるが詳しく内容を知られないように気をつけて喋っているのに、座談会とパンフレットで石田さんが「見てのお楽しみ」といっているのに、舞台写真にかこつけて内容を全部ばらした『歌劇』『グラフ』って一体なんなんだ?
宝塚ショーの原点を観た。ショーで扱われるモチーフがほとんど全部入っている。たぶん宝塚(のショー)は、「ノバ・ボサ・ノバ」=鴨川清作を未だ越えることができていないのだと思う。
『再会』の余波もあって、雪組が好い感じで弾けていた。こんなに客席・舞台ともに熱気のある雪組公演は、本当に久しぶりだ。『ノバ・ボサ・ノバ』は難しそうなダンスばかりだが、第24場「アデーウス・カルナバル」のところは、観ていて単純に振りがおもしろかった。できそうで、できない。主題歌以外の曲もいつまでたっても忘れないってのもいいし、「名作」って云われることだけはある。
安蘭けい=マール、ブリーザ=朝海ひかる、メール夫人=成瀬こうき、というAパターンだったのだが、朝海ひかるのブリーザはなかなか良かった。情熱的なラテン系って感じ。バーンと魅せる感じなので、女役ではなくて男役がやるというのが、やはり正解なんだろう。月組も千紘れいかで、一応、元男役だしね。しかしあれだ。オーロ(香寿たつき)は、マールのただならぬ気配を感じて位置を変えたんぢゃないかって気がするのは、気のせい? 香寿たつきは、『再会』のマークはどうってことないけれど、オーロでは小悪党って感じがよく出ていた。ブリーザの死んで嘆いてはいるものの、なんかすぐ忘れてそうなところが、オーロっぽい。
舞台終了後、混雑した通路で叔母様方が語っていた「宝塚でなきゃ観れないわよね〜」という言葉が、ひどく印象的でした。相変わらず、おなかが痛いです。
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