宝塚歌劇団花組 「タンゴ・アルゼンチーノ」「ザ・レビュー '99」

9/14/1999 13:00開演 宝塚大劇場


「タンゴ・アルゼンチーノ」

あまり期待しないようにしていたつもりなのだが、なんだか肩すかしを喰ったようで、「あれっ?」って具合だった。確かに前作よりずっとまともなのだけど、私自身集中力を要する芝居をここ最近見続けていたせいもあって、物足りなさを感じた。

ストーリーも悪くはないし、盛り上がるポイントはある。マルグリットとフリオが一瞬のうちに恋に落ちるところとか、そんなふたりの逢瀬を知ってカールがフリオに決闘を申し込むところとか、最後で生きて戦争から戻ってきたフリオとマルグリットが再会する場面とか。生き別れの弟ジャンとマルグリットが出会う場面もショッキングなはずなんだけど、どれもガツンと来るものがなかった。小池さん東宝『エリザベート』やるんで手抜いてない?ってのは言い過ぎだとしても、心に引っかからないのは、なぜ?(ウエシンの作品にあんなに反応するのは、阪神ファンと同じ心理なんぢゃないかと最近思う アンチ巨人なゆえに巨人が気になるって云うの?)

大鳥さんが、マルグリットという人物に合ってないんぢゃないかと思ったんですよ。そりゃトップ娘役なんだから色物ぢゃない役が来るのは当然だし、宝塚という組織内ではやらなくちゃならないんだろうけど。大鳥れいのマルグリットが昔の娼婦仲間に強請られるなんて、あまり観たくなかったなあと云うのが、正直なところです。フリオとのアトリエでのキスシーンは好きだけど(邪魔が入らなかったら、本当に通じちゃっていたよね アツイよね〜)。以前、高級娼婦で貴族の愛人だったって云われてピンと来るものがない大鳥さんにも、問題はあるとしてもだ。

そういうもやもやとか違和感をずっと感じた居心地の悪い1時間30分だった。


「ザ・レビュー '99」

こちらも求心力に欠けた感じである。オケボックスに見とれていたって、どうってことないのだものね。「デビュタント」は同じような場面を過去に月組のショー(『夢・フラグランス』1992年 演出・岡田敬二)で見たことがある。まいったね、こりゃ。ああでも、座談会でも「芸術祭賞を頂いた名作のラインナップ」とか云っていたし、今年の構成からしても寄せ集めであることは始めからお知らせしていたわけだ。ふ〜ん。

オープニングでは、タンゴが印象に残っている。なぜってそれはお芝居も『タンゴ・アルゼンチーノ』で、タンゴ続きだからだ。だぶっているけど、いーのだろーか。鈴懸三由岐がぴしぴし踊っていて、この場面に限らず、結構目についた。

ロケットは人数が多いからとにかく圧巻。多いことはいいことだ。楓さんがセンターというのも合わせて、必見である。でも、『ノバ・ボサ・ノバ』の時もそうだが、なんかしゃべくりしてたのが、なんでだろう。たぶん「ナインティーナイン」とか云っていたのだけど、いいぢゃんべつに、と思ってしまう。

「アトランティック・オーシャン」は、絶対「タイタニック」。想定が1920年代というあたりからして、そしてそれ以外に想像させないような書き割りの船だった。というのはおいといて、宝塚の強みは群舞だね〜と、本当に思う。ここでも鈴懸三由岐がダンスで目を惹いた。

「夢人」はストーリー性のある唯一の場面である。イーグルがカッコイイ。イーグルがでてくると音楽もギターが前面にでてくるのだが、怖くて黒くて好い。プログラムを見ると、夢人と白い鳥が恋に落ちるゆえに出てくる魔鳥らしい。この場面の音楽はちょっぴりRENAISSANCEっぽいFolkである。で、今頃気がついたのだが、宝塚音楽の特徴はドラムの手数が多いってことだった。フェニックスはこれまた人海戦術である。

特に印象強かったのが以上の場面だが、このレビューはとにかくほとんど総出に近いんぢゃないかっていうくらい、人を多く使っていた。これでもかというくらい出てきて、大人数の強みは活かされていた。ただ、その分補欠がいないから、出突っ張りになる人も出てくるわけで、ハードである(レビューやショーの最低人数は60人だそうである それを切ると空間が埋まらないという話をどこかで読んだ)。個々の場面についてはそれなりに覚えているのだが、『ザ・レビュー '99』全体だとおぼろげにしか覚えていないのは、なぜでしょう。


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