宝塚歌劇団花組 「タンゴ・アルゼンチーノ」「ザ・レビュー '99」

1999-11-22 13:30開演 宝塚1000days劇場


「タンゴ・アルゼンチーノ」

「夜明けの序曲」よりはまともだけれども、わたしの中では大劇場での評価があまり良くなかったので、東京も期待していなかった。そして、期待は裏切られなかった。あまり印象に残らないっていうのも、ねぇ。

とは云っても、水夏希のオットーは目についた。オーストリアという特徴の出しにくい国出身の若者だけれど、スラッとしていてきれいだし、ひとり違ったアウラを醸していた。あまり絵描きには見えないが。お国自慢でマリー(舞風りら)相手にワルツを踊るところも楽しそうにくるくる回っていて好いけど、サライェヴォ事件を知ってひきつった顔をしていた(様に見えた)のが好きだ。マイク(春野寿美礼)に云われたオットーとセルゲイ(楓沙樹)が仲直りの握手をするけど、お互いにわだかまりのあるぎこちない雰囲気なのがエライと思った。これが植田紳爾氏だと、なんの疑いもなく仲直りして友情を盛り上げちゃうんだろ〜な〜。国に帰って入隊するというとこも、ひょっとしたら負けるかもしれないし、このまま幽霊船の仲間と離ればなれになってしまうかもしれないと云う切羽詰まった予感を感じさせた。『ロミジュリ』東京には来ないのか?観たいぞ(すると『ロミオとジュリエット'2000』になっちゃうな。マ○クロソ○トの"office2000"っぽくてタイトルがヤかも)。ちなみに「皇帝は年老いて」という台詞は、『エリザベート』を想起させる。

マルグリット(大鳥れい)は、もうちょっと楽に生きてこれたら良かったのに(まだ若いのに)、という感じで、パリに戻ってきた当初のカールが思っているマルゴを演じているがための閉塞感とか、立て続けに勃発した様々なトラブルでストレスを感じている様子がよく出ていた。しかし、最後ハッピーエンドだけど、発散する部分もないし、やっぱりちょっと観ていて辛い。でも、フリオ(愛華みれ)に出会ったことで、赤十字の従軍看護婦に志願したり、ジャズ・ニューオリンズで給仕したり、自分で決めて自分の身の丈にあった生き方を見つけることができて良かったね、と思う。ちょっとでてきた薔薇のコサージュは、それをフリオに渡した時点でマルゴの思いは彼に移行していたことを表象しているようで、おもしろい。

眠気を誘う要素(ライティング・上演時間帯・いまいちインパクトに欠く等)が多くて、寝不足の身にとって非常に酷だった。


「ザ・レビュー '99」

「アトランティック・オーシャン」では、なぜだか甲板が木更津フェリーを連想させた。彼方に見える漁港の灯。リンダ(大鳥れい)の赤いガウンはあまりセンス良いとは思えないが、愛華と大鳥の船上の恋のデュエットダンスは好かった。行きずりの恋ってカンジ? 「夢人」は、思っていたより歌詞がフォーク、メロディーが演歌だったが(大劇場ではそう感じなかった)、フェニックスでちょっと手数が増えただけで、アニー・ハズラムが歌っていてもおかしくないようなFolkになっていて、なんだか初演の時代を感じてしまった。復活のダンスは、『ノバ・ボサ・ノバ』を観てしまうと「シナーマン」みたいで、思ったより飛翔感が得られなかった。

大劇場を観たときに「デビュタント」は『夢・フラグランス』で似た場面を観たと思ったのだが、ビンゴだった。『夢・フラグランス』のリメークなんだそうだ。リメーク・・・悪くはないけど、ってことは『ザ・レビュー'99』は『ザ・レビュー』の再演ぢゃなくて、継ぎ接ぎだらけの新作と云わないか? わたしでもショーの構成はできそう、と錯覚してしまったね。なんか、ファンのことバカにしてない?

ところで「なにを今更」と言う話なのだが、匠ひびきってつくづくすごい人だ。彼女の身体機能はいろんな人によって語られているけれど、しみじみとそれを感じた。「ザ・レビュー'99」はレビューなので、もちろんダンスはある。ほかの人たちに比べて、匠は力の出し方がうまい。100%以上の力を出す−たぶん人によって考え方は違うのだろうけれど−というのは、体力の配分を考えていないように思える。お酒と一緒で自分の極限を知るにはいいけれど、ずっとその状態ではいずれは事故に繋がるだろう。匠ひびきは、常に70%のところで自分の力をセーブしているのではないか。そして残り30%の余裕を感じさせる。そこが感心するし、優れていると思う。


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