風琴工房 「ヤフーの媚薬」

2000-02-19 15:00 開演 門仲天井ホール


夫婦間セックスの話。というか、妻のセックスにおける自己決定権の話。見終わったあと、客席が固まったままだった。ご案内で「一般受けするような楽しいお芝居ではありません」と言い切っていたからなぁ。

どこか架空の、奴隷制度が残る国。ある一組の夫婦がいて、ある日、妻シミ(森岡毬子)が市場から大きな箱を持ち帰る。その中にはひとりの少女(鉄村夏芽)が入っていた。夫トチ(堤利朗)との「夜のお勤め」の代理としてシミに買われた、フエという名の奴隷の少女だった。奴隷の話をすると「まるで奴隷制度が存在することが許せないかのように」眉根にしわを寄せるそんなシミに、いきなり「私の変わりに」と奴隷のフエをあてがわれたトチの困惑。シミの思惑とは──

夫婦だからセックスするのは当たり前と思っていたトチと、そう思っていなかったシミ。シミの出した結果がフエ、というわけだ。奴隷制度を嫌っている風のシミがフエに代理でセックスさせるという(それも残酷だ)、そこまで追いつめられていたのなら、代理を立てられない場合、それはそれはとても辛いんではないんだろうか。深読みすると「奴隷市場の立つ架空の国」を舞台にすることで、まだ性に対してイントレランスな状況とか、変わったようで変わってない関係とか、浮き彫りにされたのかな。自分が当たり前だと思っていたことでもほかの人にとっては違うんだよ、ということで、マジョリティとか社会制度や慣習の中で優位に立っている人は、そうでない人のことにも(こちら側から言わないと解らないと云うことはあるにせよ)気を遣って欲しいな、ということである。

カップルによっても違うんだろうけど、私は「やだよ〜」っていうのを醸しているらしいので、あまりツライ思いはしたことない(愛のベクトルが相手よりまだ自分に向かっているからか?う〜ん,どうなんだろう)。でもそれがいきなり「一緒に暮らそう→結婚しよう」ってことになったときにどう変わっていくのか、なあなあで済ませるのではなくて、シミにならないように、少しづつでも本音(嗜好・指向等言ってないことはまだまだ沢山ある)を見せて話さないといかんな、と思った。

あと、トチのと絡みのシーンのためだけに出てきたような(でも重要)フエだが、彼女をもうちょっと話に絡められていたらよかったかもしれない。1時間という上演時間は短かったか(でも1時間半だとツライな)。

6月の本公演は半陰陽の話なので、これも興味があるテーマなので楽しみである。


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