2001-03-11 11:00/15:00 開演 2001-03-12 13:00 開演 宝塚大劇場
風花舞の「LAST STEPS」を手がけているとはいえ、大劇場初めてとは思えない。観る前は、荻田ワールド炸裂の繊細な内容なのかな、と思ったが、ところがどうして、立派にレビュー作品である。レトロでノスタルジックとは思わないが、プログラムの色と相まって、切ないシーンが多い割に、明るいイメージ(玻璃窗越から見上げた空の碧さ)を抱く。
この作品の中で最も優れていると思ったのは、実はどんな場面でもなく主題歌だ。サブタイトルにもなっている「硝子の空の記憶」は、なかなかパリっぽい素敵な小曲で、6拍子のリズムが聴きやすいシャンソンである。オーソドックスなショーの構成を踏襲してプロローグ・中詰め・フィナーレと歌われるので、メロディーを口ずさみながら帰れるのもウレシイ。この曲がレビュー全体の色を支配しているといっても過言ではないだろう。
「玻璃の街角・地獄」は荻田氏の闇が如何なく発揮されている場面である。特に「玻璃の街角・地獄A」の、不安なバンドネオンのメロディーとか囚われの片翼もがれた空中ブランコの少女(紺野まひる)、無数の手によって闇に引きずり込まれる怖さ。大戦前のパリの退廃した雰囲気、というよりも江戸川乱歩的ないかがわしさを強く感じた(機会があったら是非荻田演出で江戸川乱歩の世界を!やっぱり明智小五郎&小林少年が出てくるのがいいな)。続くB・Cもその妖しさ度にゾクゾクしっぱなしだった。黒衣の少女(紺野)と踊る堕天使(朝海ひかる)は、唇の端に笑いをたたえているのが、不吉で妖しい。
「硝子の空の記憶」は、冒頭の死にゆく女(五峰亜季)と男(天希かおり)の緊迫したダンスが秀逸だ。その緊張を持続したまま出会っては引き裂かれる男と女の交叉するダンス、硝子の破片を手にする轟の海のように果てない哀しみに引き込まれる。この場面は最後に天使・朝海のダンスによって救済される。
とにかく、朝海ひかるのダンスがひときわ目につく。繰り出される長い手足、しなやかな肢体、余計な力がすべて削ぎ落とされ無駄がない。背はあまり高くないがひとたび踊り出せばその存在感で空間を埋め尽くす。そして、30%の余裕を感じさせる数少ないダンサーだ。このたび、惚れぼれと見直してしまった。
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