2002-08-06 18:30開演 東京宝塚劇場
観る前は、本当になんにも期待していなかった。むしろ題材が題材だけに『国境に地図』っぽいのでは、と思っていたほどである。ヘスも、なんだかカウフマンみたいだし。さすが屋台骨がしっかりしているおかげで、当初思っていたより意外とおもしろく観ることができた。プチ・チェコ現代史「プラハの春」早わかり(わかったつもり?)、とでも云うのか。ただし、原作は読んでいない。それにしてもなんで衣装が、“ごるちぇ”なんでしょうかね。衣装にこのブランドを採用する必要は果たしてあったのだろうか。芝居の時代とマッチしていないというか、なんだか違和感を感じた。ポジェナ殺害の場面も、絶対に必要とは思えなかった。唐突だし。(まさか公安の愚行を描こうとした?)
香寿たつきと渚あきは熟年カップルだけあって、濃密な芝居を魅せていた。2階にも気を配ることができるのは、さすがだ。カテリーナは、その立場と状況からか、今年のロヤジルガに参加したカブール大学の女性教授の姿とダブった。シュナイダー局長はシタージの局長のクセして、えらくいい人である。いい人すぎて、ヘスの独走が止められないのでは、という気もする。カテリーナのことを愛していて、ヘスに殺させたくないために堀江を通じてカテリーナに自主を促す。立場と主義が相反しており、なかなか切ない。それにしても、麻園みき、麻路さきにますますそっくり。
それで『プラハの春』一番の楽しみといえば、夢輝のあのヘス中佐。ボンテージファッションで、カテリーナをいたぶり、どんな鬼畜ぶりなのだろうと、まあ勝手に妄想したほうが悪いんだけど。原作には書かれていると思われる、カテリーナを執拗に追い回すストーカーぶり、その背景がいまいち舞台だけではわかりづらかった。でも、一般プラハ市民のフリして街頭演説を聴いていたり、チラシを受け取ったり、たとえ後ろを向いていても、とにかく悪役オーラが迸っていて、釘付けである。プラス、出てはニヤリと笑い首をひねるのが、いかにも狂気じみているではないか。終盤、ピストルを磨くところ、特に台詞もなかったと思うけど(あゝ、脚本…)、「絶対この人コワイよ〜」と本気で思った。そしてカテリーナ射殺場面は、狙いを定めタイミングを計りつつ、振り向きざまに引き金を引くまで、とても活き活きしており、また恐ろしいほど綺麗な顔である。しかもそこがヘス中佐、一番良かった。なんか、夢輝のあ、はまった。
(余談. プログラムの場面解説の記述には不満が残る. ヘスは市民の中に紛れておりその中でカテリーナを射殺したのだ. 関係者には射殺犯が誰だかわかったとしても, 正体が分からなければヘスではないということになるわけで. 突然現れて撃ったとあれば, それは秘密でもなんでもないではないか. 殺す機会はたくさんあったわけだし.)
芝居が長めだったので、ショーは短め。あっという間に終わってしまうのである。もう勢いである。しかも、「Lucky Star!」だけは2回目の観劇だが、夢輝のあと鳴海じゅんばかり観ていたので、他の記憶があまりない。「星の彷人」は、ワケわかんない(しかも熟年カップルはここでも濃厚に絡んでいたりして)けど、中詰め「闇から光へ」が勢いがあって音楽も個人的にはお気に入り。
闇の男はゴム飛びみたいだったけど、夢輝のあは唄って踊って、大変目立っていた。1作観ないうちに、すごい存在感である。ヘスで髪がひとり金色なので、それでまた目についた。そして鳴海じゅんも、おいしい。「ラッキー・スター!」でも、歌手でいいところにいたし、「闇から光へ」の荒野の男でも、渚あき誘って銀橋渡っていたし、光の男で、舞台センターで(ただし銀橋には安蘭けい)踊っていた。この引っ込みのウインクが、もろにオペラグラスの中に入って、やはりはまってしまった。クサいんだけど、かっこいいし、大きく見える。今後、別格の座を目指して欲しいぞ。
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