2003-04-12 14:00開演 ル テアトル銀座
幼稚な感想であるが、すごくおもしろかった。初演は観ておらず、これが初見。「パロディだから」と聞いていたが、それは確かで、お腹イッパイになった。そしてやっぱり新感線は大阪の劇団だな、と。ここまで、というくらいパロディ満載というか全編パロディ、且つ新感線オリジナル(使用しているナンバーが初演とずいぶん変わっているようなので、半分くらいは書き直しているのでは)。大味なところとか、展開がもたついた部分はあるが、既成のものを処理という点では、どこぞの劇団のどこかの演出家に、爪の垢を煎じて飲ませたいくらいである。下ネタがないのも、青天の霹靂ではないかと。
設定はガラスの仮面で、音楽は「エリザベート」を中心に、「モーツアルト!」、他有名どころミュージカルナンバー、などをピックアップ。ストーリーや、登場人物が奇人揃いなのでそのおかしさやにも笑えて、元ネタを知らなくても当然楽しめるのだが、ミュージカルナンバーのパロディてんこもりに、口元がにやけっぱなしだった。「まさかあの場面までもが」というシーンまであり、一緒に行った人たちと終演後に、ロベスピエールとヴォルフガングの二人羽織話で盛り上がってしまった。まさに力技なのである。ミュージカル以外では月影花之丞一座の公演で、「紅天狗(紅の花)」「闇の洗濯人(御命、御洗濯)」ともに、篠原演芸場というよりかは新宿コマのような雰囲気はあるものの、非常にそれっぽい。大衆演劇の場面、ミュージカルシーン、それぞれにそのジャンルの特徴というか「そうそう、そうなんだよね」というものが凝縮されており、実はそれだけ抜き出しても充分一本成り立ちそうな中味である。(予告編的おもしろさとも云う) だからといって、バックステージ部分がミュージカルっぽくなかったわけではない。音楽がほぼ既成曲がベースとなっている強みがあるのと、キレてる人たちばかりなので、いきなり歌出しても「不自然」ではない。マンガ的なところが逆に、ミュージカルとしてうまくはまっていたように感じた。
実は、モーツアルトの配役をみた際にナンネール役が高橋由美子ということでちょっと見くびっていたままだったのだが、なかなかどうして。観てみないとわからないものである。(そういえば風間杜夫の居直り左平次も見逃していたな) 力一杯になると声を張り上げてしまい苦しそうな発声になっていたのは気になったが、意外と(というと失礼であるが)上手いではないか。
森奈みはるも、どうしても宝塚にいた時にはいろいろと枷があり、肩身が狭そうな印象がつきまとっていた。本人が実際どう思っていたかはともかく。退団後の舞台を観るのは、2001年の狸御殿以来になるのだが、無理がなく、嬉々としてるのを観るとやはりウレシイものである。よほど水(ウマ)が合うのか、新感線にも4回目の出演である。
ただ初演は、カケル役は花組芝居の植本潤が演じていたとのこと。セクシャリティもジェンダーも一度無効にしてしまう「宝塚」の人間がカケル演じるのであれば、男役を起用したほうが、存在としてはおもしろいのかなとも思った。が、元「トップ娘役」が敢えて演じることで、袋小路健作の部分に無理が生じるのが、狙いにあったのかもしれないのかも。(それは考え過ぎ)
最後に、「ヴォルフガング×アマデウス」は「モーツアルト!」とは別物なので、「是非あの脚本で宝塚で」とか思ってしまった。ムリかな。常々ケラさんなんかを宝塚に招聘したらおもしろいかもと思っていたが、中島かずき×いのうえひでのりのほうが、相性がよさそうだ。東京に比べて大阪圏は素養として宝塚が刷り込まれている印象があるから、あまり違和感無いような気がする。新感線と云えば、竹団さんも衣装担当したことある(「ルードヴィヒII世」)ことだしネ。
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