2003-08-30 17:00開演 新橋演舞場
おもしろいことはおもしろい。なんて書くとエラそうだな。しかも、新感線の初演も、染五郎の初演も見てないのに。お話はおもしろかったんだよ。ツッコミどころもあるけどさ。
陰陽によって治められていた江戸。跋扈する鬼、あやかしと、鬼退治をする鬼御門。今は鶴屋南北一座に居候の身であり、かつては優秀な鬼御門の一員だった病葉出門は、鬼御門に追われるつばきという女と出会い、惹かれる。つばきは右肩に椿の花形をした痣があり、それこそが鬼たちが求める「阿修羅」への手がかりとなる印だった。鬼と手を組んだ鬼御門の安倍邪空に拐かされたつばきと、つばきを救出すべく鬼の棲処に乗り込んだ出門の運命は如何に。
役者はもちろん、格子状のセットも八百屋も音楽も迫力あった。無駄ない仕事してる。でもこの物足りなさはなんだ、と思ったら、主人公・病葉出門を最大のライバル視する悪役の安倍邪空が、サッパリしていたのが原因だったのだ。悪くはないんだけど、なんだろう。見るからに悪役だけど、悪役としての怖さというかカタルシスを得られなかった。邪空にはそれが必要だと思うのだが。なぜ彼が阿修羅を追い求めるのか。出門に執着するのか。出門に対して可愛さ余って憎さ百倍な感じが見えなかったのが、もどかしかった。
染五郎は、さすが座長だけあって出てくるだけで空気は締まるし、いちいち型が決まって気持ちがいい。着流し姿が田村正和っぽいというか(せめてお父さんに似てるとか云おうよ)、非常に色っぽかった。天海祐希も、転生してからはちょっと怖く作りすぎてるような気もしたけれども、闇のつばきは粋で鯔背で。それにこの人も出てくると空気が締まる。さすが昔取った杵柄である。ひとり洋装でいても全然違和感なかった。(鬼だから) でも実は一番格好良かったのは、橋本じゅんである。出門と刀鍛冶の抜刀斎のお互いがお互いの力を信用しているところとか、刀に捧げる職人魂とか、痺れた。もちろんエンジェルもである。格好良かったと云えば、もうひとり。13代目安倍清明の近藤芳正さんも挙げなければ。清明もどきとして、鬼御門の長の影武者として、鬼たちの不穏な空気を憂い、出門を陰日向から見守る懐の深さと、清明の娘で賀茂家に嫁いだものの出門を慕っている桜姫と一緒にいるときのすっとぼけた感じのギャップがよかった。
ところで、桜姫の愛犬の名前が一幕アンドレから二幕フェルゼンに変わっていたのが、個人的にはツボだった。ベルばらかよ。
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