宝塚歌劇団雪組 「Romance de Paris」「レ・コラージュ」

2003-09-25 11:00/15:30 開演 2003-09-26 13:00 開演 宝塚大劇場


「Romance de Paris」

お手軽というか他愛ないというか、『ブラック・ジャック』や『二人だけが悪』、『Love Insurance』あたりを四則計算すると、こんなのが出来たという感じ。どこかアラブの某国の王女と行きがかり上彼女を助けた青年の身分違いの恋の話(かなり簡略)で、内容自体はわかりやすい。お話自体は一度観れば十分だったりする。あくまで恋の背景として描かれるクーデターも、その発生している事態の重みのわりには極めて閉鎖的環境で収拾に向けて進んでいく。このあたり、やはりお伽噺だなあと思った。そして正塚さんも、(どちらかというと)ロマンスメインの話を書くようになったのね、と妙な気持ちになった。そのわりに、ふたりのデートの場面は長く感じたし、実際ダレ場だったように思う。最近の正塚作品には欠かせない主役のモノローグも、今回ばかりは多く感じたし、どういうわけか何度観てもそれは飽きが来てしまった。あまり効果的ではなかったということか。しかし、本人至って真面目なんだけれどもちょっとベクトルが他人とは違うのか、なんだかおかしい、という人物も配し、何はともあれ、初めて宝塚体験する人や一回しか観ない人にはとにかくわかりやすい、という点においては、親切な作りであるといえるだろう。

今回思わずツボに入ったのが、まず、山科愛の射的係員。ヴァンサン(朝海ひかる)とナディア(舞風りら)のデートの場面に登場する、テキ屋のネーちゃんである。客商売(一応)の割にはぶっきらぼうで愛想もないし、でもあの造形は、なかなか「そんな雰囲気*」があってよかった。脱・子役には成功してる。それよりなにより大学時代の先輩にそっくりなのが、驚いた。

次いで、ディミトリ(音月桂)の、ナディアを匿うための目くらましのキスシーン。個人的に「目くらまし」と云うシチュエーションが好きなだけだが。ハイファ(麻倉ももこ)にキスしているようにも、あくまでフリで抱き合ってるようにも見ることができる。しかし、バンジャマン(未来優希)の「何やってたんだ、お前は」には、「ナニやってたんだ(そこまでやれとは云ってない)」という意味が含まれてるように聞こえてしかたない。ハイファ視点だと、ちょっとわからなくなるシーンでもあるのだが、ディミトリとしてはおいしいかも。ハイファをソファに押し付けてる姿勢なので、見ようによっては、ちょっとの同意さえあればすぐにでも次のステップに進みそうな勢いが。(深読み) そんな意味(どんなイミだ)でも、ヴァンサンとナディアの対という意味でも、いろいろと若いディミトリであった。(この場面だけでなく)

そして、ラシッドの部下のイブラヒム(凰稀かなめ)とハミド(緒月遠麻)。ラシッドにイロハを叩き込まれているようだがとうてい足元には及ばないので(たぶん)、ムジャヒド(貴城けい)が囮と云うことには指摘されるまで気がつかないのである。ふたりとも大きくて体格がいいから、要人警護(っていうか用心棒)の役職が全く違和感ない。ハミドは髭まで生やして、見るからに武闘派。なかなか強そうである。相棒のイブラヒムは知性派エリートのにほひがプンプンである。しかし、一瞬なにか企んでそうに見えるのはなんでだ。作戦実行後にナディアを部屋に案内して退室する際の仕草が、なんでもないシーンだけど、印象的だった。(王族に対して忠誠を示すものなのかな?)

よく考えたら、お笑い部門を一身に背負ったボケキャラにもかかわらず、囮としてしっかり自分の役割を果たしているムジャヒドは、なかなかどうして凄いではないか。それ以前にナディアが本国との繋ぎといえども彼を頼っているあたりで、信用はあるわけだ。文官だからか、人畜無害だからか。広報官とはいえども、彼もまたやはりエリート(お金持ち・軍隊経験あり)である。

* 景品のクマのぬいぐるみをはたいて、埃に顔を顰めてみたり、ナディアにアドヴァイスをしているヴァンサンのほうが的に当たらなくて、その様子をニヤニヤしながら、やっぱりガム噛みながら見ていたり。「お二人ですかぁ」「どーぞ」「ハイ、大当たりぃ。オメデトー」という台詞のいちいちが、どうでもよさげな一本調子の言い回しで、この射的係員なら確かにそんな感じである。映画館の場面でも引き続いて観客で登場しており、隣に座った人(たぶんこれは知り合いではない、と思っている)に話しかけたり、でもお年寄りには優しくしてみたりと、成人して自分の稼ぎ(たぶんバイトの掛け持ちとか)でそこそこ暮らしていってるんぢゃないかな、という様子は見て取れると思う。(イタイよ)(しかも深読み)


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