燐光群+グッドフェローズ プロデュース
「CVR チャーリー・ビクター・ロミオ」

2003-11-23 14:00開演 下北沢ザ・スズナリ


CHARLIE VICTOR ROMEO の日本版で、昨年、燐光群主宰の坂手洋二とコレクティブ・アコンシャスの演出家、音響家とで共同制作された。その再演。

演出がどうとか、役者の演技がどうとか、そういうことにとらわれるのは無意味である。創り手側の意見は盛り込まれず、淡々と、事故までのコックピットボイスレコーダーに刻まれた記録が、再現される。

危機的状況に陥り、なんとか事故を回避させようとするコックピット内の緊迫したやりとりを見るのは興味深くもあり、恐ろしいことでもあった。また、芝居の導入でキャビン・アナウンス(運行予定時間と緊急時の安全確保の確認)があり、そのうえ、飛行機に乗っているときの機体の揺れや振動音まで再現されているので(音響技術によって)、観客と云うよりも、乗客として事故機に乗り合わせた感覚にすらなる。そのままコックピット内のやり取りを見ているので、とても不思議というか、緊張した。

取り上げている事故機は以下の通り(上演順)。(便名/事故発生年月日)

  1. アメリカン航空1572便/1995年11月12日
  2. シモンズ・エアライン(アメリカン・イーグル)4184便/1994年10月31日
  3. アエロペルー航空603便/1996年10月2日
  4. アメリカ合衆国空軍ユークラ27便/1995年9月22日
  5. 日本航空123便/1985年8月12日
  6. ユナイテッド航空232便/1989年7月19日

特にアエロペルー航空は、頼りにすべき計器が正常作動せず、機長、副操縦士がパニックを起こし、結果として墜落したのだが、他の事例に比べてコックピット内の混乱振りは際立っていた。(機長と副操縦士と全く逆の判断をしたり。それでも冷静になろうと努めたり、管制から報告される速度や高度、位置といった情報でできる限りのことをしているのだけど) 離陸時だったから割と冒頭だけれども、計器が狂っていることがわかり「最新機器なのに!」という機長の言葉には、信じてたものに裏切られた時の苛立ちや茫然自失とした感が集約されており、重かった。それが、機体洗浄のために貼った養生テープの剥がし忘れが原因であるというところに、強いやりきれなさが残った。

各話とも、ボイスレコーダーがぷっつりと途絶えた後にスクリーンに死傷者数と原因が投影されるのだが、これと終演後に渡された資料を見れば見るほど、そしてそれが、「した、らば」というような、結果的には人災というあたりが、いたたまれない。

# どうでもいいが、11月22日朝日新聞夕刊の、コックピット内の計器に液晶画面が使われるようになったという液晶技術の記事の中で、「飛行機は安全第一だから最新技術を採用するのではなく、動作が安定している機械を使用する」という旨の文があった。だからどうした、ということではないが。


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